今のパリを、しみじみとみずみずしく描く


本名:橋本清一 サイン:SEI HASHIMOTO

【略歴】 1938年 神戸市に生まれる。

小磯良平、田村孝之介などからもデッサンの指導を受ける。

1961年 日本大学芸術学部美術学科卒業。

パリと多摩丘陵にアトリエを持ち制作活動を行う。

 

【賞】 シュトゥットガルト国際カレンダー展コダック賞、全日本カレンダー展、ACC賞、

            サロン・デュ・ブラン日仏現代作家美術展グランプリ他。

 

 


セイ・ハシモトの作品には、今のパリが描かれています。その作品には日本人の美意識がたどり着き、また日本人の美意識を形成してきた伝統的な詩的表現である俳句にも似て、的確に核心を撞いた世界を感じることが出来ます。回りくどい説明を削ぎ落としてダイレクトに核心に触れた表現は、広重にも通じるような大胆な構図や詩的な表現が感じらます。それらがやさしい叙情性で観る者を包み込むような、独特の絵画世界を創り上げているのです。 

さらに、オイルパステルとソフトパステルを併用して見事に光や水を描き出すハシモトのパステル作品には、しっかりとした質感があり、独特のメディア感を獲得しています。この独自のパステル技法が、作品の魅力を一層みずみずしく味わい深いものにしています。

 セイ・ハシモト作品を見る時にしばしば経験する風景の中に溶け込んでゆくような不思議な感覚は、夕暮れや夜を描いた作品で顕著に感じられるのですが、昼の光と影を描いた作品にも、閉じ込めることができない時の広がりを感じることが出来るでしょう。

 外国の街を描いた現代の作品に、日本の伝統的美意識を見ることが出来るのはとても興味深いことだといえますが、その作品は今のパリらしさにあふれています。

 セイ・ハシモト的絵画世界は、日本人の良質な文化的感性を示すひとつの表現として存在していると言えるでしょう。その意味で、垢抜けしたパリの風景を描いて見せてくれているハシモトの作品は、とても日本性のあふれたパリの情景となっていて、明治以降多くの日本人画家の憧憬であった対象が咀嚼され、それでも尚、新鮮さを失わない懐かしいもののように私たちの心をひきつけるのです。

 


作家の言葉=目に見えぬ時間の流れを描きたい。  

 

・・・・・・・・・・「私が初めてモンマルトルのサン・ヴァンサン通りに立った時、生まれ育った神戸の坂の街と景色の気分が同じなので切なく思ったことが有ります。すっかり遠くなった故郷を異国で感じるとは不思議なことです。人はまだ見ぬものを求めて旅をしますが、人それぞれの原風景とか、表情は違っていてもその風景の底にひそむ普遍的なある共通項を無意識のうちに見ているのかも知れません。」

 

・・・・・・・「よく知っている通りのすぐ裏に見知らぬ細道があり、不思議な小路から突然駅前に出たりする。描き尽くせぬ美しい迷路のような、パリの多くの細道。」